【エニアグラム】タイプ1とタイプ6の違い: 「正しさ」と「安全」の深すぎる溝

もしあなたが今、自分を「タイプ6」だと考えていて、その理由が「いつも自分を疑ってしまう」「自分の判断が信じられない」というものなら、少し立ち止まってください。

それは本当にタイプ6の疑念でしょうか?

実は、タイプ1の人も、特にストレスが溜まっているときや、健全度が低下しているときには、激しい自己批判と自己不信に陥ります。この状態は、外から見るとタイプ6の持つ「疑念」と見分けがつきにくいことがあります。

しかし、両者の「不安」が向かう方向は根本的に異なります。本記事では、この二つのタイプの不安を心理学的な視点も交えて言語化し、あなたの迷いを解消します。

(関連記事:ホーナイの追従型から見るタイプ1・2・6の違い


1. 不安の焦点: 内向きの批判か、外向きの警戒か

タイプ1とタイプ6は、どちらも「不安」と「疑念」を抱えますが、その矛先が異なります。

タイプ1の不安: 「私は間違っている」という確信

タイプ1の不安は、徹底的に内側、つまり自分自身に向けられています。タイプ1が疑うのは、自分自身の正しさ、道徳性、判断なのです。(他者に対してではありません)

タイプ1の内面の声には、次のようなものがあります。

  • 「私は正しくあれているだろうか?」
  • 「この判断は間違っているのではないか?」
  • 「私は不完全で、欠陥がある」
  • 「私の存在そのものが、どこか間違っている気がする」

これらの声は、タイプ1の心の中に住む「内なる批評家(Inner Critic)」の声です。

タイプ1の心理は、心理学者メラニー・クラインが提唱した「迫害的対象(Persecutory Object)」という概念で説明できます。タイプ1の内面には、常に自分を批判し、裁く存在が住んでいます。タイプ1は「根本的に欠陥がある」と感じ、自分自身を批判から守ろうとします。

タイプ6の不安: 「世界は信頼できない」という確信

対照的に、タイプ6の不安は、徹底的に外側、つまり外部世界に向けられています。タイプ6が警戒するのは、他者の信頼性、状況の安全性、将来の不確実性なのです。

タイプ6の内面の声には、次のようなものがあります。

  • 「この人は本当に信頼できるのか?」
  • 「この状況は安全なのか?」
  • 「何か見落としているリスクはないか?」
  • 「もし裏切られたらどうしよう」

心理学のアクセント

エリク・エリクソンの心理社会的発達理論では、タイプ6は人生の最初の課題である「基本的信頼 vs 不信(Basic Trust vs. Mistrust)」の課題を抱えていると考えられます。世界は基本的に安全であるという感覚が育たなかったため、大人になっても外部からの脅威に対して常に警戒心を持つのです。


2. 決定的な違い: 「正しさ」の意味

タイプ1もタイプ6も、「正しい」ことを求めますが、その意味はまったく違います。

タイプ1の「正しさ」:道徳的・倫理的な完全性

タイプ1にとっての正しさとは、「道徳的に正しいこと」「倫理的に完璧であること」を意味します。彼らは、抽象的な原則に基づき、普遍的な基準に従おうとします。

タイプ1の問いは、主に倫理や理想に関するものです。

  • これは倫理的に正しいか?
  • この方法は、理想的な基準に達しているか?
  • 私は誠実に、公正に行動しているか?

哲学者イマヌエル・カントの「定言命法」のような「普遍的な法則となることを望めるように行動せよ」という考え方が、タイプ1の思考パターンに近いです。彼らは、個別の状況よりも、普遍的な原則を重視します。

タイプ6の「正しさ」:安全で信頼できる選択

タイプ6にとっての正しさとは、「安全な選択」「リスクの少ない判断」「信頼できる方法」を意味します。彼らは、具体的な結果に基づき、状況に応じた安全策を選ぼうとします。

タイプ6の問いは、主にリスクと安全に関するものです。

  • これは安全な選択か?
  • この方法で、リスクを最小化できるか?
  • この人の言うことは、信頼できるか?

哲学者ウィリアム・ジェームズの「真理とは、私たちが信じることで利益をもたらすものである」という実用主義に近い考え方が、タイプ6の判断基準に近いといえます。彼らは、「何が真実か」よりも「何が安全か」「何が機能するか」を重視します。


3. 具体的な場面で見る対照的な反応

場面: 自分の判断への疑念

重要な決断をした後、不安になったときの反応を比べます。

タイプ疑念の対象内面の独白(葛藤)
タイプ1自分の道徳性・判断の正しさ「この決断は正しかったのか?私は間違った判断をしたかもしれない。私の価値観は正しいのか?」
タイプ6決断の結果として生じる外部リスク「この決断で、何か問題が起きないか?見落としたリスクはないか?他の人はこの決断をどう思うだろう?」

確認行動の違い: 何を確認しているのか?

どちらのタイプも「確認」という行動を取りますが、確認する対象が異なります。

  • タイプ1の確認: 「正しい方法」の確認
    • 目的: 完璧性を保証すること、批判を避けること
    • 確認の相手: マニュアル、ルールブック、倫理基準
  • タイプ6の確認: 「安全性」の確認
    • 目的: 安全を確保すること、裏切りを避けること
    • 確認の相手: 権威者、信頼できる人、複数の情報源

4. 不健全な状態の可視化: 崩壊のパターン

健全度が低下すると、両者の違いはさらに明確になります。

不健全なタイプ1: 内なる審判者の暴走

不健全なタイプ1は、自己批判が極端になり、自分を許せなくなります。

  • 強迫的な完璧主義に陥り、「一つのミスも許されない」と考える。
  • 自己嫌悪と罪悪感が募り、「私は根本的に間違っている」と感じる。
  • 怒りが抑圧され、頭痛、肩こりなどの身体症状として現れる。
  • 内面の独白: 「私は何をやってもダメだ。正しく生きることができない。私は存在する価値がないのかもしれない…」

重要なのは、この批判がすべて自分自身に向けられているという点です。

不健全なタイプ6: 妄想的な疑念と不安

不健全なタイプ6は、疑念が妄想的になり、誰も信頼できなくなります。

  • 過剰な警戒心を持ち、「誰かが私を陥れようとしている」と感じる。
  • 誰かに頼りたいと思いながら、同時にその人を激しく疑う「依存と反発の激しい揺れ」がある。
  • 「もし○○が起きたら?」という思考が止まらず、決断できなくなる。
  • 内面の独白: 「誰も信用できない。この世界は危険だ。あの人の親切には裏があるはずだ。どこにも安全な場所はない…」

重要なのは、この疑念が外部世界と他者に向けられているという点です。

まとめ: 二つの不安、二つの道

タイプ1とタイプ6は、どちらも追従的に見え、自己不信を抱きます。しかし、その不安の本質は根本的に異なります。

  • タイプ1の旅: 内面の批評家と戦い、「完璧でなくても、私は価値がある」という自己受容への道です。彼らは、タイプ7の自発性や遊び心を統合することで成長します。
  • タイプ6の旅: 外部世界の不確実性と戦い、「世界は不完全でも、基本的には大丈夫だ」という基本的信頼への道です。彼らは、タイプ9の内なる平和と受容を統合することで成長します。

以下の問いに、静かに答えてみてください。

  1. 不安になるとき、心の中で響く声は「私は正しくあれているか?」か、「この状況は安全か?」か?
  2. あなたが最も恐れているのは、「間違うこと」か、「裏切られること」か?

この問いへの答えが、あなたの本当のタイプを見つける手がかりとなるでしょう。

(次に読む記事:タイプ2とタイプ6の違い: 「愛情」と「安全」の追従を深く掘り下げる

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木村真基

Kimura Naoki

ウェブデザイナー/エニアグラム講師

プロフィール

「ひよこ君とフクロウ君のエニアグラム( 9つの性格 )講座」の運営者。本業はホームページ制作。ホームページの効果を実証するために、ひよこ君とフクロウ君のエニアグラム講座を開始。気づけば、エニアグラム、16性格診断、ソシオニクスのタイプ判定を生業にしている。

・エニアグラム:3w4sp-sx-so&Tritype386
・16の性格:ENTP(討論者)&ILE(ENTp)(発明家)
・ストレングスファインダー:着想、戦略性、学習欲、達成欲、自我

などの性格類型を活用して、自分らしく生きる方法を提唱中。

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