エニアグラムタイプ1+セクシャル=「熱心な人」とは?

本記事は、ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン『エニアグラム【実践編】』と、ベアトリス・チェスナット『The Complete Enneagram: 27 Paths to Greater Self-Knowledge』の2冊を下敷きにしています。
エニアグラムの9つのタイプの下には、3つの生得本能があります。
自己保存(Sp)、セクシャル(Sx)、ソーシャル(So)。誰もが3つとも持っていますが、優位・サブ・盲点という順番があります。
ここで、ひとつ前提を共有させてください。
この順番は、調子がいいときには見えません。
健全度が4より上にある間、同じタイプの3人はほとんど同じに見えます。
誠実で、責任感があって、基準が高い。生得本能の違いは、表に出てきません。
違いがはっきり出るのは、健全度4を過ぎてからです。
余裕がなくなり、自分を守るために資源を取りに行く必要が出た瞬間、3人はまったく別の方向へ走り出します。
つまり、生得本能の特徴が濃く出ているとき、それは健全度が下がっているサインです。
本記事で描くのは、そのサインが出たあとの話です。あまり気持ちのいい内容ではありません。
セクシャルタイプ1は、怒りをどこへ向けるか
タイプ1の中心にあるのは、抑圧された怒りです。
ところがセクシャルタイプ1は、あまり抑圧しません。ここがこの型の特異なところです。
セクシャル本能が取りに行く資源は、強度です。ひとつの対象に全部を注ぎ、そこで自分が生きていることを確認する。
そこにタイプ1の「正しさ」が乗ると、どうなるか。
特定の一人に対して、正しさを全力で注ぎ込みます。
社会全体を変えようとは思いません。制度に怒っても長続きしません。あなたの怒りは、いつも顔の見える誰かに向かっています。パートナー、生徒、部下、友人、家族。
そしてあなたは、その相手を心から高めたいと思っています。嘘ではありません。本気です。
その本気が、これから起きることの燃料になります。
健全状態のタイプ1
あなたには、人を引き上げる力があります。
理想を語れます。しかも抽象論ではなく、目の前の相手に届く言葉で語れます。だから人が動きます。
あなたと出会って人生が変わった、という人が実際にいるはずです。あなたは誰かの転機になれる人間です。
他のタイプ1が怒りを飲み込んで静かに正すのに対して、あなたは熱をぶつけて、相手ごと動かします。
ここまでは、まったく問題ありません。
問題は、ここから先です。
健全度4を過ぎたとき
余裕がなくなると、順番に起きます。
兆し|相手に基準を求めはじめる
「あなたならできる」。この言葉が出ます。褒めているつもりです。実際には、要求です。
加速|領域に踏み込む
相手の生活、時間の使い方、交友関係、選択。全部が視界に入ってきます。そして、口に出します。
なぜ言えるのか?
相手のためだと本気で信じているからです。
軋み|応じないと、熱が怒りに変わる
声が大きくなります。詰めます。理屈で追い込みます。相手が黙っても止まりません。黙ったのは納得していないからだ、とわかるからです。
固執|「あなたのため」が支配になる
あなたはまだ、相手を高めているつもりです。
ですが相手にとっては、逃げ場のない矯正です。しかもあなたの言うことは正しいので、反論できません。正しさで殴られるのが、いちばんきついのです。
崩落|相手が離れる
そして、あなたは裏切られたと感じます。あれだけやったのに、と。
ひとつ、身も蓋もないことを言います。
あなたは相手を高めているのではなく、相手を自分の基準に合わせているだけかもしれません。
高めたいという気持ちが本物であることと、やっていることが支配であることは、両立します。
つながりを求めすぎて、つながれなくなる
さて、ここからが本題です。
エニアグラムの怖いところは、その人を守るための戦略が、その人を壊すという一点にあります。セクシャルタイプ1では、それが最も残酷な形で起きます。
順を追いましょう。
あなたが相手に踏み込むのは、深くつながりたいからです。ここに嘘はありません。表面的な関係では満たされないから、本気で関わる。
ところが、あなたの本気には条件がついています。相手が正しくなることです。
だから、関われば関わるほど要求が増えます。深くなるほど基準が細かくなります。近づくほど、相手にとって逃げ場がなくなります。
そして相手は離れます。
離れられたあなたは、どう解釈するか。
「まだ足りなかった」と解釈します。
もっと真剣に向き合えばよかった。もっとはっきり言えばよかった。次はもっと本気でいこう。
次の相手に、前より強い熱を注ぎます。そして、前より早く離れられます。
深くつながるために踏み込んで、踏み込むことで相手を失う。 失った経験を、次はもっと本気でと解釈する。 本気になるほど、相手は逃げる。
これが、セクシャルタイプ1の自己破壊のループです。
一周するたびに、あなたは正しくなり、そして孤独になります。しかも周囲から見ると、あなたは何も間違っていません。言っていることは全部正論です。だから誰もあなたを止められません。
最後に残るのは、誰よりも正しくて、誰とも深く結ばれていない自分です。
ここまで落ちると、ひとりで戻るのはかなり難しくなります。あなたが持っている道具は「もっと本気で向き合う」しかないからです。そして、その道具こそが原因なのです。
あなたが失っているもの
セクシャルが優位ということは、他の2つのどちらかが盲点です。
この型では、ソーシャルが最下位に来ることが多いです。位置情報の領域です。
つまり、こういうことが起きます。
1対1では圧倒的に強いのに、集団の中では浮きます。会議で正論を言って、空気を凍らせます。派閥も政治も興味がありません。根回しという言葉に、生理的な嫌悪があります。
そして、こう思っていませんか。
「そんなことに気を遣うくらいなら、正しいことを言えばいい」
その一行が、盲点です。
あなたの熱は本物です。ただ、その熱が届く範囲は、いつも一人ずつです。そして一人ずつ失っていくうちに、あなたを支える集団は、ひとつも育っていません。
なお、自己保存が盲点に来る場合もあります。その場合は、誰かに熱を注いでいる間に、自分の生活が静かに壊れます。
自認チェック
3つ挙げます。
その1。 誰かに本気で怒ったあと、「言い過ぎた」ではなく「伝わらなかった」と思ったことがありますか。
その2。 自分が決めたルールを自分で破ったとき、他人に対するより厳しく自分を責めましたか。
その3。 熱を注いだ相手が離れていったことが、一度以上ありますか。
3つとも「はい」でしたか。
では、残念なお知らせです。
この3つは、他のタイプでも「はい」になります。
強い執着、対象への集中、離れられた経験。表に出る行動は、驚くほど似ます。分かれるのは、怒ったその瞬間に何を守っていたか、その一点だけです。
そしてそれは、自分の内側からは見えません。
順番まで、決めます
そもそもタイプ1なのか。セクシャルが本当に優位なのか、実はサブなのか。盲点はソーシャルなのか、自己保存なのか。
行動を並べても決まりません。同じ行動が、複数の場所から出るからです。
セッションでは、9タイプ、ウィング、そして本能スタックを、矛盾のない一つの並びにします。優位・サブ・盲点の3つを、順番まで確定させます。そして「なぜ他のタイプではないのか」を、理由をつけて切ります。
ループから出る手順は、そのあとの話です。まず、自分がどのループに入っているのかを、正確に知るところからです。
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「このタイプっぽい」「いや、やっぱ違うかも」くらいが、いちばん楽しい時間です。
自認が3回くらい変わっても大丈夫です。それも含めて楽しんでください。
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