3つの本能タイプ:自己保存、セクシャル、ソーシャルとは?

同じ性格タイプなのに「仕事の鬼」と「恋愛依存」に分かれるのはなぜか?
エニアグラムで同じ「タイプ3(達成する人)」と診断された二人がいます。 一人は、寝る間も惜しんでキャリアと貯金に全振りする「仕事の鬼」。 もう一人は、魅力的な外見を磨き上げ、恋愛市場で常に勝ち組でいようとする「モテの追求者」。
性格のタイプは同じはずなのに、なぜここまで人生の目的が違うのでしょうか?

その答えが、『生得本能(サブタイプ)』です!って言いたいんだよね!

いきなり結論から言わんでくれ…まぁ、そうなんじゃが。
本記事では、そんなエニアグラムのサブタイプである「生得本能」についてご紹介していきます。
生得本能の立ち位置
はじめに、これだけを覚えてください。

エニアグラムの9つの性格では「なぜ行動するのか?」という動機(怖れ×欲求)を見るのに対して、生得本能では、危機的状況に陥ったときに「どこに資源を求めるか?」について教えてくれます。

「資源」って何?なんか聞きなれない

原始時代は、まさに衣食住だった。しかし現代は違う。
原始時代の怖れは「飢餓」でした。だからこそ、その関心先は「エサがどこにあるか?」です。現代では、「メンタルの回復する場所がどこにあるか?」と置き換えてみてください。
生得本能は「性格タイプ」ではありません
タイプ毎の生存戦略とその優先順位です。
あなたは、どこに資源を求めますか?
自分にとって優先順位が高いと思う順に、 本能を2つタップしてください。

人間も動物なんだね。ちょっと安心した。

そうじゃ。心の問題って結局生存に関わる本能なんじゃよ。
エニアグラムは心の問題なのに対して、生得本能が扱うのはより下層かもしれません。私たちの意識とは関係のないところで動いています。いま、この瞬間に傷ついた心を守るために、3つの本能のうちどれか一つに集中し、その結果、どれかひとつの盲点を生み出します。
3つの本能
自己保存
Self-Preservation

自己保存本能が見ているのは、身体、生活、時間、お金、環境です。不安になると「まず足場を固めろ」と反応します。
勉強する。食事を整える。睡眠を確保する。備蓄する。習慣を作る。同じやり方を繰り返す。情報や物を収集する。行動をパターン化する。これらはすべて、自分の生活を予測可能な状態に戻すための自己保存的な動きです。
強くなりすぎると、それは安定ではなく惰性になります。
変化を避け、孤立し、人との接触を減らし、「面倒なことはしない」という回避に入ります。安全圏を守るために、世界そのものを小さくしていくわけです。
性格タイプ論にハマる場合も、知識を集め、分類し、整理し、同じパターンを何度も確認するという自己保存的な使い方はあります。ただし、自己保存そのものは必ずしもSNSへ向かう本能ではありません。むしろ自分の世界が確保されているなら、タイムラインを追わず、必要な情報だけ拾って静かに離れる人もいます。
自己保存の落とし穴は、「生活さえ守れば大丈夫」と思い始めることです。
ソーシャル
Social

ソーシャル本能が見ているのは、所属、役割、立場、距離感です。自分はどこにいるのか、誰とつながっているのか、この場でどう振る舞うべきなのかを常に確認します。
コミュニケーション、情報共有、SNS、コミュニティ、界隈への参加も、この本能と非常に相性がいい領域です。
「返信が来ているかな」
「今、界隈で何が話題なんだろう」
「自分の投稿はどう見られている?」
「誰と誰がつながった?」
「昨日までいた人が消えている」
タイムラインが気になって仕方がない。通知を何度も確認する。界隈の人間関係や空気の変化を把握している。こうした状態は、単なるSNS好きというより、ソーシャル本能によって動かされていると言えるでしょう。
ソーシャル=コミュ力高い人ではありません。人付き合いが苦手でも、集団内の立場や距離感を異常なほど意識していれば、ソーシャルの関心はかなり強い可能性があります。逆に「自分はソーシャル盲点だから人付き合いが苦手」と考えていても、毎日SNSの空気を追い、界隈の動向を細かく把握しているなら、その行動自体はかなりソーシャル的です。
強くなりすぎると、「自分がどう感じるか」より「この場でどう見えるか」が優先されます。人との接続を失わないために、自分を削り始めます。
セクシャル
Sexual

セクシャル本能が求めているのは、愛着、執着、刺激、情熱です。「自分が生きている」と感じさせる強い対象を探します。
恋愛にのめり込む。誰かに強く愛着を持つ。推し活に熱中する。仕事や創作に没頭する。運動で限界まで追い込む。娯楽で一気に発散する。刺激を求めて次々と新しい対象へ移る。
こうした動きは、セクシャル本能が生命力を回復しようとする典型的な方向です。
セクシャルは「1対1」や「恋愛好き」だけではありません。人間以外にも、思想、作品、趣味、研究、スポーツなど、自分を燃やしてくれる対象なら何でも資源になります。
一方で、不安定になると感情の振れ幅が大きくなります。猛烈に熱中したかと思えば、急激に冷める。愛着が執着へ変わる。退屈になると別の刺激を探す。気分やエネルギーが極端に上下するような、双極的な動きにも見えやすくなります。
セクシャルの落とし穴は、「燃えていなければ生きていない」と感じ始めることです。
生得本能は「強みを伸ばす理論」ではない
自己保存は生活を守る。ソーシャルはつながりを守る。セクシャルは生命力を守る。
どれも必要です。
問題は、不安になったときに「自分を守れる場所はここしかない」と決めつけることです。
自己保存に偏れば、生活を固めすぎて世界が狭くなる。ソーシャルに偏れば、界隈や人間関係から離れられなくなる。セクシャルに偏れば、刺激や執着なしでは自分を保てなくなる。
だから生得本能は、単純な「強みを活かそう」という話ではありません。
むしろ見るべきなのは、自分が普段ほとんど使っていない領域です。
優位本能は放っておいても使います。サブ本能も必要なら使えます。だから重要なのは盲点です。
生得本能を学ぶとは、得意な生き残り方をPRすることではなく、自分が切り捨てている生き残り方を取り戻すことです。
各タイプの生得本能
改革する人
「正しさ」への執着が暴走したとき、完璧主義の強要や、愛の名を借りた理想の押し付けが始まります。
助ける人
「愛されない恐れ」が強まると、見返りの要求や依存の強要など、自己犠牲がコントロールへと変貌します。
達成する人
「無価値への恐れ」から、過労、ルッキズムの奴隷、虚栄心とマウント合戦へと身を投じてしまいます。
個性的な人
アイデンティティの欠如感から、孤立への逃避、破滅的なツンデレ行動、深いルサンチマンに陥ります。
観察する人
圧倒される世界から身を守るため、完全な隔離、極端な妄想、そして知的な冷笑主義へと引きこもります。
忠実な人
「見捨てられる恐れ」が被害妄想や執拗な試し行為、あるいは権威への盲従と排他性を生み出します。
熱中する人
苦痛を回避するための快楽主義が暴走し、依存症的行動や、無責任な現実逃避へと姿を変えます。
挑戦する人
弱らされることへの恐れから、極端な自己中心主義や、人間関係・組織における破滅的な支配欲に駆られます。
平和をもたらす人
対立を恐れるあまり、完全な麻痺状態(ネグレクト)や破滅的な共依存、極端な事なかれ主義へと沈んでいきます。
生得本能と学派
ドン・リチャード・リソとラス・ハドソンの研究によると、今回の生得本能とエニアグラムの健全度には切っても切り離せない関係があります。

生得本能は、エニアグラムの中でも著者によって解釈が分かれやすい領域です。
たとえばSNSでは、「So盲点=社会不適合」「Sp優位=陰キャ」「Sx優位=エロい」といったネタも見かけます。
結論からいうと、リソ=ハドソンのエニアグラム【実践編】での生得本能とは全く別物です。
Enneagram Instituteでは、自己保存・ソーシャル・セクシャルを3つの基本的な本能として扱い、特定のタイプが優位になったときの健全度を見ています。(通常と不健全の説明しかないです)
一方、クラウディオ・ナランホの流れを継ぐベアトリス・チェスナットでは、タイプの「情熱」と優位本能が結びついて27種類のサブタイプを作るという考え方が強くなります。
つまり「タイプ3+Sp」というより、「Sp3という固有の人物像」を詳しく描いていく方向です。
『自由へのエニアグラム』のイーライ・ジャクソン=ベアも、自己保存・ソーシャル・セクシャルという3つのドライブを扱いますが、目的は性格分類そのものより、どの本能が固着を支えているのかを見抜き、そこから自由になることに置かれています。
同書では、セクシャルをかなり直接的に「sex」と結びつけて説明する箇所がたくさんありました。
つまり、同じSp・So・Sxという言葉を使っていても、学派によって見ているものが少し違います。
生得本能のポテンシャル
本記事では、リソ=ハドソンを基準に説明してきましたが、最後にひとつ。
生得本能は、学派や用途に応じてもっと自由に使っていいと思っています。
当方がセッションでリソ=ハドソンに準じているのは、エニアグラムの基礎理論や健全度と一本につなげやすくいからです。診断士として一貫したエニアグラム判定をひとつの流れで提供するときの基準です。
実際、イメージコンサルティングや婚活の領域で「エニアグラム講師として活動したい」という相談を受けたときには、生得本能の見せ方をその市場に合わせて変更してきました。
婚活案件なら、安心を作る自己保存、世間体を気にするソーシャル、愛情と感情だけで突っ走れるセクシャル。イメコンなら、心地よさ重視・TPO重視・魅力重視というように翻訳できます。
つまり生得本能は、エニアグラムと比べても、マーケットインしやすいコンテンツなのです。
筆者自身も、発達障害グレーゾーンをテーマにした案件では、医療的な診断そのものとは切り離した「行動傾向を理解するための比喩」として、
自己保存 → ASD的な「反復・パターン化・環境固定」
セクシャル → ADHD的な「刺激追求・過集中・衝動性」
ソーシャル → 社会不安的な「対人評価・所属・距離感への過敏さ」
という読み替えを使うことがあります。
もちろん、これは「Sp=ASD」「Sx=ADHD」「So=社会不安障害」という診断上の等式ではありません。医学的な診断名をエニアグラムで判定することもできません。
重要なのは、表面のラベルを変えても、エニアグラムの骨格を壊さないことです。
9タイプで「なぜ」を見る。
生得本能で「どこに資源を求めるか」を見る。
健全度で「どれだけそこに囚われているか」を見る。
この骨格さえ残しておけば、生得本能は恋愛にも、仕事にも、SNSにも、教育にも、自己理解にも展開できます。むしろ、そこが生得本能の面白さです。
完成された27種類のキャラクターを暗記するための理論ではありません。人間が不安になったとき、どこへ逃げ込み、どこへしがみつき、その代わりに何を見失うのか。
この構造を押さえれば、生得本能はかなり自由に翻訳できます。
理論を守るために現実を押し込めるのではなく、現実を説明するために理論を使う。
生得本能には、それだけの柔軟性とポテンシャルがあります。
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