エニアグラムはフロイト心理学に基づいた弁証法的な「3分法」を採用して、無意識にある欲望や恐れを掘り下げて私たちの性格構造を理解します。
一方、16性格診断はユングの理論をベースに、相反する2つの軸で分けています。
エニアグラム=フロイト心理学
フロイトの理論は、意識と無意識の間での葛藤を説明するために、
- イド(本能的な欲求)
- エゴ(現実的な自己)
- スーパーエゴ(道徳的な抑制)
という3つの要素を使います。エニアグラムでも、各性格タイプが内面の深い動機、欲望、恐れを中心に形成され、3つのセンター(本能、感情、思考)に分類されます。
エニアグラムの第一人者であるドン・リチャード・リソ氏とラス・ハドソン氏は、フロイト心理学をエニアグラムに取り入れる際、ホーナイの「対人関係における行動パターンのモデル」を採用したのは有名な話です。
なお、ドンリチャード氏は、エニアグラムとユング心理学の連携を図ろうとしましたが、「ぶっちゃけよくわからなかった!」と言っています。(性格のタイプより)
16性格診断=ユング心理学
16性格診断は、ユング心理学の「2分法」をベースにしています。ユングの性格類型論は、人間の認知プロセスを「外向」と「内向」の2つの極に分けることから始まり、さらに情報をどう知覚するか(感覚 vs 直観)、どう判断するか(思考 vs 感情)という2分法に基づいています。(JとPの指標は、カーシー氏が開発しました)
これらの2つの対立した機能の組み合わせによって、16の性格タイプが作り出されます。
なお、ユングは、性格タイプ理論において非常に大きな影響を与えた人物ですが、ユング自身は「性格タイプの専門家」ではありません。ユングが提唱したのは、8つの心理機能を提唱して、これが後にマイヤーズ×ブリックスの親子がユングの考えを採用して、タイプ指標を作り上げました。
ユングの研究は、人間の意識と無意識の相互作用を理解するためのものであり、性格そのものを分類するためではありませんでした。
まとめ:終わりなき戦い
エニアグラムと16性格診断の「二刀流」としての指導者がほとんどいないのは、実はフロイト心理学とユング心理学の対立が背景にあるのかもしれませんね。
エニアグラムはフロイトの影響を受け、無意識にある欲望や恐れを掘り下げるのに対し、16性格診断はユングの理論に基づいており、意識的な認知プロセスに焦点を当てています。まるで水と油のようなこの2つのアプローチが、同時に使われることが少ない理由なのかもしれません。
この2つの異なる心理学を融合し、性格を多面的に理解できる場を提供しているのは、まさにこの対立を乗り越えることができたからでしょう。エニアグラムと16性格診断を同時に学ぶことで、より高解像度で自分自身を表現できる可能性が広がります。
