エニアグラム:トライタイプ396
トライタイプ396は、成功への強い欲求(タイプ3)、平和への志向(タイプ9)、そして安全性への意識(タイプ6)が組み合わさった、独特な性格構造を持っています。
このタイプは、最初は成果達成に注力しながらも、やがて現場での調整役として振る舞い、最終的には安定した居場所を確保することを目指します。
特徴と行動パターン
プライマリー:タイプ3(達成する人)
目標を達成するために、具体的な数値目標の設定や詳細な行動計画の立案に多くの時間を費やします。
その上で、早朝から深夜まで働き、期限よりも早く成果を出すことで上司や同僚からの信頼を得ようとします。
メールの返信は即座に行い、会議では率先して発言し、プロジェクトでは中心的な役割を担おうとします。
プレゼンテーションの資料は何度も推敲を重ね、話し方や身だしなみにも細心の注意を払い、「できる人材」として周囲に認識されることを目指します。困難な課題に直面しても、すぐに複数の解決策を提示し、実行に移すことができます。
しかし、このような高い期待に応え続けることに疲れを感じ始めます。常にパーフェクトを求められる重圧や、休日も仕事のことが頭から離れない状況に徐々に息苦しさを覚えていき…
- もっと楽な方法があるのではないか
- このペースを続ける必要があるのか
という疑問が生まれ、心身共に消耗していきます。
セカンダリー:タイプ9(平和をもたらす人)
タイプ3の重圧に限界を感じると、次第に外界に身を任せるようになります。
会議では積極的な発言を控え、代わりに周囲の意見に耳を傾け、対立する意見の間を取り持つ役割を担います。
クライアントとの打ち合わせでも、強引に提案を通すのではなく、相手の要望をじっくりと聞き、実現可能な範囲で調整を図ります。
チーム内では、メンバー間の意見の食い違いや、部署間の軋轢を和らげることに注力します。
自分の考えを前面に出すことは避け、
- まずはやってみましょう
- 少し様子を見てみませんか
といった柔軟な対応で場をまとめていきます。
しかし、この調整役としての振る舞いは、本来の自分の姿ではないことを感じています。
非効率、非生産的、縁の下の力持ち…などタイプ3であればだれもが避けたいことをしまくっています。
以前のように明確な目標に向かって全力で突き進めない状況に、どこか物足りなさを感じています。
アクセル全開で走りたかったのに、徐行運転を強いられるような感覚かも知れません。
とはいえ、タイプ9の状態では、チームの調整役として地道な貢献を通して、
- この修正案なら両者とも納得できそうですね
- まずはこの部分から進めてみましょうか
と、物事をスムーズに進められる手ごたえを得ることができます。
その結果、徐々にプロジェクトが軌道に乗り、チームの雰囲気も良好になっていきます。
この感覚は本人にとっても不思議です。
テルシャリー:タイプ6(忠実な人)
この着実な成果を目の当たりにして、周囲から
- あなたがいてくれて本当に助かる
- このチームになくてはならない存在だ
という信頼の声が寄せられます。
タイプ6の段階では、この手応えを実感として受け止めることができ、自分の居場所が確かなものとして認められ、安心感が芽生えてきます。
そしてこの安定感を土台があるから、タイプ3の根源的欲求である「価値ある存在になりたい」を実現できます。
今度は以前のような過度な疲弊を伴わず、チームとの調和を保ちながら、自分らしい目標達成を目指すことができます。「このプロジェクト、もっと良い成果が出せそうですね」と、自然な形で主導権を取り戻していくのです。
成長プロセス
高速道路から降りる
一見すると遠回りに思えるトライタイプ396の道のりは、実は最も効率的な成長過程です。車の運転に例えてみましょう。高速道路を突っ走り続けるだけでは、景色は見えず、地域の人々とも出会えず、休憩すら満足に取れません。
高速道路をひた走る生き方は、一見効率的に見えます。しかし、次第にその限界が見えてきます。長時間の運転で疲労が蓄積していくのに、サービスエリアは限られており、必要な時に休憩が取れません。エネルギー切れを感じても、補給のタイミングを逃してしまいます。
一度渋滞に巻き込まれると、高速道路では身動きが取れません。延々と続く車の列の中で、ペースは乱されます。絶え間ない緊張状態の中、持続可能なペースを保つことができなくなっていきます。
この時に、いったい自分が誰のために、何のために努力をしているのか?がわからなくなります。
そんな時、一般道に降りることを選択します。
確かに遠回りかもしれません。しかし、この道のりには、小さなガソリンスタンドがあり、地域の食堂があり、思いがけない抜け道があります。渋滞を察知したら、地元の人に教えてもらった裏道を通ることもできます。
そうやって人の温かさに触れたり、普段は想像できない景色を見ることにより、未来の結果だけではなく、この瞬間を楽しむことを覚えます。
この「寄り道」は、実は長距離走行に必要な叡智を授けてくれます。エネルギーの補給方法、柔軟な対応力、持続可能なペース配分—こうした経験の積み重ねが、より確実なゴールへの到達を可能にしてくれるのです。
結果、そのゴールにたどり着いたときに、「色々と楽しい道のりだった」と思えるようになるのです。
魔女の宅急便の教訓
トライタイプ396の動きを象徴的に表している例として、宮崎駿の映画『魔女の宅急便』のキキの成長物語が挙げられます。
- タイプ3:最初、キキは魔女として独立し、自分の配達サービスで成功を収めようと奔走します。効率的に配達をこなし、評判を得ようと必死に働きます。しかし、この直線的な成功追求は次第に彼女を疲弊させ、ついには魔力を失ってしまいます。
- タイプ9:この危機に際して、キキは画家のウルスラの元で過ごすことを選びます(タイプ9)。ウルスラの生活に寄り添い、絵を描く彼女の姿を見守りながら、焦らずにゆっくりと過ごします。この期間は一見すると後退のように見えますが、実は重要な休息と気づきの時間となります。
- タイプ6:森の中の静かな生活で心の安定を取り戻し(タイプ6)、街の人々との信頼関係を実感したキキは、最後には自分らしい魔女として飛び立つことができます(タイプ3に戻る)。特に、街の人々が彼女を「コリコの魔女」として認め、受け入れていることを実感できたことが、彼女の再出発の力となります。
この物語は、直線的な成功追求から一度離れ、周囲との調和の中で自分の居場所を見つけ、そこから再び飛び立つというトライタイプ396の動きを、美しく描いています。
最短距離で目標に向かうのではなく、ペースを落としても「遠回り」を選ぶことで、より確かな成長を遂げるというトライタイプ396の本質を体現しているのです。
成長のためのアドバイス
このトライタイプの最大の課題は、タイプ9の段階で経験する自己妥協をいかに乗り越えるかにあります。現場での調整役としての役割は重要ですが、それは一時的なものであり、最終的にはタイプ6との統合を通じて安定した居場所を確保し、本来のタイプ3としての自分を取り戻すことが重要です。
タイプ9の段階では、以下の点に注意を払うことが大切です:
- 調和を重視しつつも、完全な自己犠牲は避ける
- この状態が一時的なものであることを認識する
- タイプ6との統合に向けて、周囲との信頼関係を意識的に築いていく
最終的に目指すべきは、タイプ6との統合を通じて安定した居場所を確保し、そこから再びタイプ3としての本来の力を発揮することです。この過程を経ることで、成果追求と周囲との調和、そして安定性のバランスが取れた、より成熟した人格として成長することができます。
このタイプの最大の強みは、達成志向と現場での調整力、そして安定性への欲求が段階的に働くことにあります。各段階での経験を適切に統合することで、高い成果を上げながらも、周囲との良好な関係を築き、持続可能な環境を作り出すことのできる、優れたリーダーとなる可能性を秘めています。
トライタイプ396の適職
トライタイプ396が活躍できる仕事は、成果とチームの調和の両方が求められる職種が理想的です。
- 現場マネージャー/店長: 売上目標の達成(タイプ3)と、スタッフの調整役(タイプ9)が求められ、最終的にはチームからの信頼(タイプ6)を得ることで、持続的な成果を上げることができます。
- プロジェクトマネージャー: 期限とKPIの遵守(タイプ3)が必要ですが、時には関係者との調整(タイプ9)に回り、プロジェクトの安定的な推進(タイプ6)を実現できます。
- 営業職: 数字の達成(タイプ3)を追求しつつ、顧客との関係構築(タイプ9)を重視し、長期的な信頼関係(タイプ6)を築くことができます。
- カスタマーサクセス: 成果指標の達成(タイプ3)と、顧客との良好な関係維持(タイプ9)、そして継続的な信頼関係の構築(タイプ6)が求められる役割です。
- 医療従事者(看護師など): 医療の質の向上(タイプ3)と、患者さんへの寄り添い(タイプ9)、そして医療チームからの信頼(タイプ6)が必要な職種です。
これらの職種に共通するのは、個人の成果と人間関係の両立が必要であり、時には成果を追求し、時には調整役に回るという柔軟性が求められる点です。トライタイプ396は、目標に向かって走りつつも、状況に応じて「急がば回れ」のアプローチを自然に実践できるため、こうした職種では長く働き続けることができます。
ここら辺は、トライタイプ386、トライタイプ385、トライタイプ387、トライタイプ316、トライタイプ315、トライタイプ317が、シングルプレーヤーとして立ち回るのに対して、トライタイプ396はチームプレーヤー×ハーモナイザ―としての役割を担ってくれます。
補足:エニアグラムの統合×分裂との違い
トライタイプ396の動きと、エニアグラムにおけるタイプ3の統合・分裂は、似て非なるものです。
トライタイプ396におけるタイプ3からタイプ9への移行は、外界との調和を図るための意識的な選択です。これは組織やチームの中で、現場の空気に合わせ、調整役として動くことで新たな価値を生み出す戦略的なアプローチです。そしてタイプ6を経て、再びタイプ3に戻るという明確な道筋を持っています。
一方、エニアグラムにおけるタイプ3からタイプ9への分裂は、自我の機能不全による無意識の逃避であり、タイプ6への統合は個人の内面的な成長による変化です。これらは個人の中で完結する心理的なプロセスです。
つまり、トライタイプの動きは組織やチームという外界との関係の中で起こる戦略的な選択であり、エニアグラムの統合・分裂という個人の内面的な動きとは本質的に異なる現象なのです。
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木村真基
ウェブデザイナー/エニアグラム講師
プロフィール
「ひよこ君とフクロウ君のエニアグラム( 9つの性格 )講座」の運営者。性格タイプ判定専門のエニアグラム×16タイプ講師。自身も講師として働きながら、お客様のセミナー集客特化型のホームページを作ることが得意。
本業:ウェブデザイナー(フリーランス)/副業:性格タイプ講師×デザイン講師
エニアグラム/16タイプ/ストレングスファインダーを武器に自分のタイプで生きている人。
・エニアグラム:3w4sp-sx-so&Tritype386
・16の性格:ENTP(討論者)&ILE(発明家)
・ストレングスファインダー:着想、戦略性、学習欲、達成欲、自我
ウェブデザインだけではなく性格もデザインします♪