論争多きソシオニクス界隈は、もはや社会の縮図|社会進歩の2つのベクトル

ソシオニクスには、16タイプを「進化(プロセス)」と「退化(結果)」の2方向に分け、社会の発展そのものを説明しようとする議論があります。

本記事は、A. G. ドヴガンが2005年に発表した論考「社会進歩のベクトルの本質について」を参考に、その骨格を紹介するものです。

アウシュラ、グレンコら過去の研究者の主張を、ドヴガンが一本の筋にまとめた仕事にあたります。

ただ、その前に。この界隈の話をさせてください。

ソシオニクス界隈がいちばんもめています

ソシオニクス界隈カオス

試しにSNSを覗いてみてください。

国内のソシオニクス界隈では、今日もどこかでバトルが起きています。

  • あのタイプ判定は間違っている…
  • その解釈は原典に反する!以上(その先なし)
  • そもそも君は自分のタイプを誤認している

ソシオ警察や自認警察たちが、140文字で殴り合いをしています。某ソシオブログのスクショを張り付け合い、スマホの裏側でドヤ顔する。時々、私もこのバトルに参加をします。お酒を飲みながらソシオニクス×ディベートとするのも悪くないです。

本場ロシアの界隈も似ている

ソシオニクスには確固たる体系こそあります。モデルAがあり、8つの情報要素があり、16の関係がある。ここは揺れません。問題はその外側です。

提唱者が、多すぎるのです

アウシュラが土台を作り、レイニンが数学的に拡張し、グレンコが山ほど概念を追加し、ブカロフが別方向へ広げ、その弟子筋がさらに枝を伸ばす。

ソシオニクスの経典…もはや存在しないのかもしれません。

エニアグラムであれば米国のエニアグラム協会、16タイプ系は…16PersonalitiesとMBTI協会と白い巨塔はありますが、ソシオニクスは完全に野良試合です。

サブタイプの数え方すら流派によって異なりますし、二分法の記述も、研究者ごとに微妙にずれいるのか、共通の規格がありません。

つまり、母国から昏迷しています。

以前に、Facebookで海外のソシオ界隈に入りましたが、Xとあまり変わらない感じでした。

残念!指導者がソシオニクスを活かせていない

ここで、いちばん愉快な事実を申し上げます。

ソシオニクスは、人と人が噛み合う仕組みを説明する理論です。

誰と誰なら補い合えるのか?なぜあの人とは話が通じないのか?機能配置から説明できるのですが、本人たちが身体を張ってドンパチをやってくれます。

補い合えるはずの相手と論争し、通じないはずの相手に「なぜ分からないのか?」と苛立ち、自分の第4機能に触られると全力で反撃する…

ここから登場する言葉が「〇〇脆弱」です。もはや、ネットトレンドになりそうです。

「……キチンとソシオニクスを使って解決すればいいじゃん?」と思われましたか?

私も思います。しかし、そうならないのです。

理由は分かっています。人は、自分の弱点を知識として理解しても、その瞬間だけは適用できないからです。理論は、殴られている最中には思い出せません。

そして、これがソシオニクスがいまいち流行らない理由なのかもしれませんね。

入口に立った人が最初に目にするのは、美しい体系ではありません。体系を語る人たちの、殺伐としたやりとりです。

これを見た人たちが「なんか怖い界隈だな…」と思って引き返す。

当然です。

はい、ここまで書いておいてなんですが、私もそのひとりです。

こうして煽り口調の記事を量産し、他人のタイプ論に注文をつけ、界隈の様子を上から眺めて論評している。今この瞬間も、界隈のカオスに一枚噛んでいる自覚があります。

(自分は違うと思っている人がいちばん危ない、というのはこの界隈の定理です。)

それでも私がこの理論から離れられない理由は、別の記事に書きました。

今日は先へ進みます。

なお、この記事は要約です。噛み砕く過程で必ず何かが落ちています。本気で学びたい方は、必ず原典をご自分で辿ってください。

私の解釈を信じ込むのは、この界隈でいちばんやってはいけないことです。

ドンパチの原因すら二分法で解る

さて本題です。

アウシュラは「社会進歩」という概念を提示しました。16タイプの総体をひとつの集合的な知性と見なし、各タイプはその社会的要請の一部を担っている、という考え方です。

そして、その進歩には2つの向きがあります。

  • 進化(右・プロセス) は、第1クアドラから第4クアドラへ向かう動きです。滑らかで、段階的で、複雑化していく方向。社会システムを精緻にし、人と資源のエネルギーを情報へ変換していきます。
  • 退化(左・結果) は、第4クアドラから第1クアドラへ戻る動きです。断続的で、不規則で、単純化していく方向。溜め込んだ情報を巻き戻し、代わりに社会的なエネルギーを解放します。

用語について一言。

退化と訳しましたが、劣化という意味ではありません。

原語のinvolutionは「内へ巻き込む」です。ばねを巻く動作を想像してください。巻いているあいだ、ばねは何もしていないように見えます。

そして、ある日跳ねます。びょーん♪

そして、これは政治的な左右とはまったく無関係です。念のため。

グレンコはこの2方向を、生物学の比喩で説明しています。

突然変異が生まれるのが退化。その変異のうち有用なものが選ばれ定着するのが進化。片方だけでは社会は死にます。進化だけなら情報が溜まりすぎて老衰し、退化だけならエネルギーが過剰になって爆発する。

要するに、どちらも必要です。

あなたがどちらでも問題ありません。

当サイトの二分法記事でいう、プロセス型と結果型の振り分けと同じです。

1415の二分法

プロセス/結果

自我・超自我ブロックの情報要素がつながる順(リング進行)で分かれます。

プロセス8 / 16

リング進行が、下のいずれかの順で進みます。

結果8 / 16

リング進行が、下のいずれかの順で進みます。

違いが出る4つの場所

ドヴガンは、両者の差を4つの水準で整理しています。生々しいところだけ抜き出します。

仕事の進め方

退化型は、プロセスがガタガタでも結果を出します。大きいところから手をつけ、細部は後回し。進化型は工程の調整と微調整に強く、几帳面に、細部まで潰しながら進みます。

言い換えると、退化型は雑に速く、進化型は丁寧に遅い。どちらも褒めていませんし、どちらも貶していません。事実です。

思考の向き

ここは実務で使えます。

退化型は一般から具体へ、進化型は具体から一般へ進みます。演繹と帰納です。

退化型は本を終わりから読みます。まず結論を確認して、それから著者がどうやってそこに辿り着いたかを逆算する。話すときも、まず大原則を述べてから細部に降ります。進化型はその逆で、本は書かれた順に読み、細部を積み上げて最後に結論を出します。

会議で噛み合わない原因の何割かは、これです。片方が結論から話し、片方が経緯から話す。どちらも誠実にやっているのに、相手が話を飛ばしているように見えます。

(そして界隈の論争も、半分はこれです。理論の対立ではなく、順番の対立です。)

距離の取り方

退化型は近距離で協調的、遠距離では不寛容。進化型はその逆です。

だから退化型は、小さな集団に向きます。

非公式で、規則が緩く、全員と直接話せる場所。進化型は大きな組織に向きます。多層の階層があり、他部署とはほどよく良好で、自分のチーム内では多少きつくても回る場所。

環境の好み

退化型の内面は単純で、矛盾が少なく、調和しています。その代わり、外の環境は複雑で不安定なほうが好ましい。紛争地帯のような場所でも平然としています。

進化型は逆です。内面が複雑で、意識の枠組みが精緻で、社会的な儀礼にも通じている。その代わり、環境が単純で明快でないと消耗します。

ちなみにドヴガンは、退化型は複雑な大組織や高位の公職から押し出される傾向がある、とも書いています。彼らが呼ばれるのは、危機のときだけです。仕組みが複雑になりすぎて機能しなくなり、誰かが単純化しなければならなくなったとき。

(普段は邪魔者扱いで、火事のときだけ呼ばれる。心当たりのある方はいますね。)

16タイプの社会的役割(欲求)

さて、この論文のハイライトです。

ドヴガンは、各タイプが社会において果たす「使命」を一覧にしました。

自分のタイプを探してください。

退化型(左)の使命

タイプ社会的使命
ESE(ESFj)感情面の成長をもたらし、人にエネルギーを充填し、新しい実践を広める
LII(INTj)基礎科学の触媒。体系の再編者。代替案を量産し、目指すべき未来の理論モデルを作る
SLE(ESTp)実践の革命家。古い体系を破壊し、新しい構造を立てる。歴史の貫通力
IEI(INFp)理想の未来、人の魂を照らす夢の創造者
LIE(ENTj)ビジネスの革新者。応用の実験者。新しい手法と戦術の発見者
ESI(ISFj)悪への対抗者。道徳基準の執行者。新しい事業の倫理的な土台を作る
IEE(ENFp)人の可能性の発見者。困難からの導き手。頼れる人材を見つけ出す
SLI(ISTp)単純な技術と手順の創造者。最小の労力で効率を劇的に上げる

進化型(右)の使命

タイプ社会的使命
ILE(ENTp)有望な発見を見つけ、本質を解明し、基礎理論として定着させ、社会へ広める
SEI(ISFp)過度の競争と労働の空気を和らげ、快適な環境と心地よい交流の場を作る
EIE(ENFj)社会の不満を感じ取り、集団の理念をより大きな集団へ広げ、そのエネルギーを導く
LSI(ISTj)改革を締めくくる。新しい構造を社会全体へ広め、秩序と規律を確立する
SEE(ESFp)影響力ある層の代弁者。取引と同盟を作り、対立を調停し、状況を安定させる
ILI(INTp)軽率な決定を批判し、危険を予期し、進路を最も安全な方向へ絞り込む
LSE(ESTj)安定期の指導者。生産性を高める技術を拾い上げ、社会に広める
EII(INFj)集団の心理的風土を整える。良い関係の芽を守り、競争の空気を平準化する

ご自分の行を読んで、どう思われましたか?

そんな大それたことはしていない」と思った方が大半でしょう。

それでいいのです。ここに書かれているのは職業ではなく、あなたが無意識にやってしまっていることの正体です。

4つの持ち場

グレンコは1991年の論考で、この左右を内向・外向で割って、社会運動における4つの持ち場を示しました。これがまた身も蓋もなくて面白い。

  • 武装者(退化型の内向) = SLI・LII・ESI・IEI ばねを巻き上げる係です。前進に必要なエネルギーを溜め込み、次に動く連中に必要なものを供給する。自分では跳ねません。
  • 戦士(退化型の外向) = IEE・ESE・LIE・SLE 溜まったエネルギーを一気に解き放つ係です。最も活動的で、最も決然としていて、最も新しい可能性を探しにいく。そして、たいてい後始末をしません。
  • 波乗り(進化型の外向) = ILE・EIE・LSE・SEE 先に立った波に運ばれ、その上を滑る係です。エネルギーを掘り出しもしないし、運びもしない。ただし、それをどこへ向けるかを知っています。大衆の不満を言葉にする説教者や、大衆を代弁する話術で地位を得た政治家は、この群に多いとされます。
  • 撤収者(進化型の内向) = EII・ILI・LSI・SEI 運動のエネルギーを散らし、次の出来事のために場を片づける係です。感情の噴出を抑え、危機的な時期をならそうとします。

さて、この4つを並べて、優劣がつけられますか?

つけられません。ばねを巻く者がいなければ跳ぶ力が生まれず、跳ぶ者がいなければ何も始まらず、方向を決める者がいなければあらぬ方へ飛び、片づける者がいなければ次が始まりません。

そして、お気づきでしょうか?

冒頭で笑ったソシオニクス界隈も、この4つで説明がつきます。

誰かが黙々と資料を溜め、誰かが噛みつき、誰かが波に乗って論評し、誰かが火を消して回っている。

こう考えると、ソシオニクス界隈は社会の縮図なんですね。

しかも、かなり忠実な縮図です。

結論は「みんな違っていい!てか、どうでもいい!」ですよね?

ありがとうございます。私もそう思います。

筆者がソシオニクスを推進しているのは、別の目的がありますから。

このサイトが立っている場所は、その先です。

居場所と役割を作る

ソシオニクスがほかの類型論と決定的に違うのは、「個人の自己理解」ではなく、グループの中にいる個人を見ているからです。

小グループの記事でも書きましたが、ソシオニクスはお互いの違いを理解して、その先にどう活かすか?という考えを体型化してくれます。

  • あなたの強い機能は、それを必要とする誰かがいて初めて価値になる
  • あなたの弱い機能は、それを埋める誰かがいて初めて補ってもらえる

今日の話でいえば、あなたが退化型で、大組織で毎日削られているとしたら、それはあなたの能力の問題ではありません。

全ては機能の配置の問題です。あなたが働くべきなのは、規則の緩い小さな集団です。

進化型で、少人数のチームが息苦しいとしたら、同じことです。あなたは階層のある大きな組織で、程よい距離を保っているときにいちばん機能します。

自分がどちらかを知り、どこに立つと壊れるかを知り、そして自分の持ち場を取りにいく。

それが、この理論の使い方です。

そして、これは界隈にもそのまま返ってきます。論争が終わらないのは、誰も自分の持ち場に立っていないからです。全員が全部の役をやろうとしている。

違っていていいのは前提です。問題は、その違いをどこに置くかです。

参考|次に読むもの

出典

※本記事は上記論考の要約であり、原典にはさらに詳細な議論(クアドラ進行の力学、恩恵関係と監督関係における情報とエネルギーの流れ、当時の政治情勢への適用など)が含まれます。本気で学ばれる方は、必ず原典をご自身で辿ってください。

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ここまでお付き合いいただき、
本当にありがとうございます。

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木村なおき
木村 なおき
ソシオニクス診断専門家 / ENTp(ILE)デザイナー
ソシオニクス エニアグラム統合診断 生成AI制作支援 クリエイター支援
2021年よりエニアグラム×ソシオニクスの統合診断を開始し、 300名超のタイプ判定・個人セッションを実施。 強みと弱みを体系化・言語化し、キャリア・起業・対人関係の現場で 使える指針を届けることを信念としている。
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誰よりも実践を意識し、理論の美しさを崩さずに教える。 2025年からはソシオニクス単体でのセミナーと個人コンサルを本格始動し、 その普及に取り組んでいます。
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