ホログラフィック・パノラマ的認知——ソシオニクスの認知スタイル

ホログラフィック・パノラマ的認知(Holographical-Panoramic)は、グレンコの4つの認知スタイルのうち、静的・否定・退化(帰納)の組み合わせから生まれる思考の型です。

一つの対象を何通りもの角度から眺め、細部を潔く切り捨てて、骨格だけを取り出す。

認知理論のなかではもっとも研究が進んでいない型でもあり、担い手はSLE・LII・IEE・ESIの4タイプ。界隈で「一発で見抜いた」とNi発言したがる人たちの正体です。(なお、この中にNi主機能は独りもいません)

ホログラフィック・パノラマとは?

このスタイルを一言でいえば、対象をぐるぐる回して「本質の断面」を重ね、「要するにこう!」と言い切る頭です。

名前の「ホログラム」は、複数の投影を重ねて立体像を得る技術に由来します。この思考も同じで、同じ対象を違う角度から何枚も投影し、頭のなかで重ね合わせて全体像へ到達する。

話すときには「一方では〜、他方では〜」「あれか、これか」と様々な視点ばかりが増えて、全然話がまとまりません。永遠にブレストしている状態にハマります。

細部やニュアンスをためらいなく切り落とし、対象を骨組みだけで表現します。円柱を思い浮かべてください。真横から切れば長方形、真上から切れば円。この二つのまったく違う断面を頭のなかで重ねると、円柱という一段高い理解へ跳ね上がる。

この跳躍こそ、この思考の醍醐味です。速い。鋭い。そして、しばしば雑です。

二分法での位置づけ

  • 静的だから:思考が確かで精密。ブレのない像を結ぶ。
  • 否定だから:対象を周期的に反対側へ引っくり返し、逆から見る。
  • 退化(帰納)だから:突然、検分の角度や判断基準を切り替える。複雑を単純へ削ぐ。

該当タイプは、どの領域でこの思考を使うか

  • SLE(ESTp)——戦術的パノラマ。 Se(外向感覚)で現実の状況を多角的に把握し、Ti(内向論理)で戦局を2〜3の要素(正面・側面・背後)へ単純化する。そこから一気に一段高い理解へ跳ぶので、危機的な局面でも素早く本質を見抜きます。(必ず「本質って何?」と突っ込まれるので、その時はLIIにパスしてください)
  • LII(INTj)——論理的パノラマ。 Ti(内向論理)で複雑なシステムを捉え、Ne(外向直観)でそれをさまざまな角度から頭のなかで回転させるように検証し、本質的な構造を明らかにします。(LIIの説明がヘタクソだと、この思考モデルは破綻します)
  • IEE(ENFp)——心理的パノラマ。 Ne(外向直観)で人の隠れた動機や可能性をいくつもの視点から探り、表面的な言動を削ぎ落として、Fi(内向倫理)でその人の核となる感情や価値観を抽出します。相手の「心理的なホログラム」を組み立てるような動きです。(まぁ、色々とあっていいじゃん♪とまとまりのないまとまりを出します)
  • ESI(ISFj)——関係的パノラマ。 Fi(内向倫理)で相手との距離を近づけたり遠ざけたりしながら関係性を多角的に探り、Se(外向感覚)で信頼できない要素を見極めて切り離します。(全員をその場に正座させて延々とお説教をします)

ホログラフィック・パノラマ的が引き受けるのは「全体構造を診断する」役割です。

アリストテレスの分類でいえば、この思考は「形相因」で現実を説明します。

彫像の原因は、大理石のなかにあらかじめ潜んでいた形であり、彫刻家はただ余分な石を削いでその形を解き放つだけだ、という捉え方。

細部を削って本質を露わにする、というこのスタイルそのものです。

ゆえに、このグループは「本質」という言葉を好んで使いたがりますが、人の数だけ本質が存在して、ひとり一派になりがちです。

因果決定論的がシステムを部品とつながりから説明しようとするのに対し、この思考は、部品からは説明できない、全体として立ち現れる性質(創発)を見つけます。

だからシステム的・生態学的な世界観へつながる。ライプニッツのモナド、ベルタランフィの一般システム理論、現代の環境思想が、この型の系譜に連なります。

タイプ界隈あるある

で、問題はここからです。タイプ界隈に置き換えると、この人の生態がありありと見えます。

初対面の相手を数分で「あ、この人ソシオニクスでいうEIE(ENFj)だ。エニアグラムは4w3、たぶんトライタイプもこう」と骨格だけ抜き出して言い切る。SNSに流れてきた誰かの数行の投稿から、その人の主機能まで一発で射抜く。見事です。当たっているのが、また憎らしい。

……ただし、そこで終わります。「全体像は出した。この人はこのタイプ。以上」。

じゃあ、そのタイプ判定を踏まえて、本人がどう人と関わればいいのか、どう強みを現場で使えばいいのか——その細部を一緒に詰めるのは誰?

「そういう地味なすり合わせは、もっと詳しい人に聞いて!私は自分の考えを言っただけだよ!」と個人の感想だけ告げて、その後の説明を果たさずにトンズラします。

界隈で、人を一瞬でタイプ判定して「はい、この人◯◯ね」で満足し、「じゃあ具体的にどうする?」の面倒には一切付き合わない——あの一発判定の快感。

その源泉が、この思考です。

因果決定論的な思考が、システムを部品とそのつながりから説明しようとするのに対し、ホログラフィック的な思考は、部品の内部構造だけからは説明できない、全体として立ち現れる性質(創発)を見つけます。

よって、このタイプは自分が見たこと、その場で感じた事しか言語化できないのです。

長所と短所

長所は、多角性と即断力。複数の視点を重ねることで、立体的で漏れのない像に到達します。飾りや大げさな装飾を嫌い、単純さと明快さを尊ぶ。とりわけ危機の場面で、細部を吟味する時間がないとき、素早く決断する強さを発揮します。

短所は、粗さと圧縮のしすぎ。物事が滑らかに進むときに重要になる細部を、平気で切り捨てます。情報を高密度に畳み込むため、その中身を他人が解凍するのは難しく、外から見ると論理の中間項が抜け落ちて見えることがある。「見ればわかるだろ」が通じないと、この人は少し不機嫌になります。

現実のモデルでいえば、ホログラムそのものと、フラクタルがこの思考の姿。フラクタルは、木や雪の結晶や海岸線のように、どの断片を取り出しても全体と同じ構造を含む図形です。ホログラムもまた、どの一片にも全体の情報が刻まれている。グレンコは、ソシオニクスのタイプもこのフラクタルのように、タイプのなかにタイプが入れ子になった構造として捉えるべきだ、とまで述べています。全体を平面的に切り分ける還元的な見方への、静かな異議申し立てです。

救いの締め

あなたの見立ては、たぶん正しい。一瞬で骨格を抜き出すその眼は、界隈でも希少な才能です。誰も気づかない本質を、あなたは先に見ている。

でも、診断は治療ではありません。本質を言い当てただけでは、目の前の何一つ動かない。あなたが「要するにこう」の一言で切り上げず、面倒でも細部を一度自分で詰めて動かしてみたなら——あなたの鋭さは、初めて現実に降りてきます。x線で骨を見るだけの人と、その骨を継ぐ人の差は、そこにあります。

……とはいえ、その細部を実際に泥まみれで回すのは、次の渦状シナジー的の仕事ですけどね。ええ、ちゃんと回しておきました。


出典:V. Gulenko, “Forms of Thinking”(2002)。ライプニッツ『モナドロジー』、ベルタランフィの一般システム理論、マンデルブロのフラクタルなどへの言及を含みます。

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木村なおき
木村 なおき
ソシオニクス診断専門家 / ENTp(ILE)デザイナー
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2021年よりエニアグラム×ソシオニクスの統合診断を開始し、 300名超のタイプ判定・個人セッションを実施。 強みと弱みを体系化・言語化し、キャリア・起業・対人関係の現場で 使える指針を届けることを信念としている。
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