アマトリカとは?なぜ旧ソ連圏ではマニアックな性格類型論が次々と生まれるのか?

アマトリカ、サイコソフィア、ソシオニクス。

日本ではかなりマニアックな性格類型論ですが、この3つを調べていくと、ある共通点に気づきます。

資料の大半がロシア語です。

そこで本記事では、日本語圏のまとめサイトやSNS上の解釈ではなく、できる限りロシア・旧ソ連圏に残されている原典や公式資料をもとに、アマトリカがどこから生まれたのかを整理してみました。

先に出典を確認しておこう

まず、サイコソフィアにはかなり明確な原典があります。

ロシアのAlexander Afanasyev(アレクサンドル・アファナシエフ)が著した『Синтаксис любви(Syntax of Love/愛の構文)』です。

サイコソフィア公式サイトによれば、この本は1980~90年代に執筆され、1993年に短縮版が初めて出版されました。

その後、完全版も出版され、Volition(意志)、Emotion(感情)、Logic(論理)、Physics(身体・物質)の4機能を順位づける24タイプの体系が提示されています。

なお、アファナシエフ本人は職業的な心理学者ではなく、文学研究・批評をバックグラウンドに持つ人物でした。

公式資料でも『Syntax of Love』は「哲学・心理学的な論考」として紹介されています。

つまりサイコソフィアは、大学の心理測定研究から生まれた人格検査というより、一人の体系家が歴史・文学・心理学を横断して構築した巨大な人間モデルと考えた方が実態に近いでしょう。

アマトリカにも公式資料

アマトリカ公式サイトによれば、この理論はEvgeny Hombak(エフゲニー・ホンバック)が2015年に作った「愛の類型論」です。

ベースになっているのは、

  • Eros(エロス)
  • Philia(フィリア)
  • Agape(アガペー)
  • Storge(ストルゲ)

という4種類の愛と、ユング派のタイプ論・アーキタイプです。

さらに興味深いことに、アマトリカ側は自らの理論史を説明するページで、Jung → Afanasyev/Psychosophy → Amatoricaという流れを示し、サイコソフィアを「intermediate link=中間的なつながり」と位置づけています。

つまり、サイコソフィアとアマトリカが似ているのは偶然ではありません。

どちらも「4つの要素を4つの位置に並べる」という発想を持つため、4 × 3 × 2 × 1 = 24タイプになります。

サイコソフィアならL・E・V・F。

アマトリカならEros・Philia・Agape・Storge。

扱っているテーマは違いますが、設計思想には明らかな親戚関係があります。

では、なぜこんな類型論が旧ソ連圏から次々と出てくるのか?

ここからが本題です。

最初に登場するのがソシオニクスです。

厳密に言えば、ソシオニクスは「ロシア生まれ」ではありません。

1970年代、当時ソ連だったリトアニアのAušra Augustinavičiūtė(アウシュラ・アウグスティナヴィチューテ)が作った理論です。

リトアニアの百科事典では、ソシオニクスはユングの『心理学的タイプ』、ポーランドの精神科医Antoni Kępińskiの「情報代謝」、フロイトなどを背景として成立したと説明されています。

ここで重要なのが「情報代謝」という考え方です。

人間を、「明るい・暗い」「社交的・内向的」といった性格形容詞だけで分類するのではなく、

どんな情報を受け取り、どのように処理するシステムなのか?として考えるのが、ソシオニクスの大きな特徴です。

アウシュラ自身の1982年の文章でも、人間は「情報代謝のタイプ」によって異なり、世界の異なる側面から受け取る情報への意識の程度が異なる、という説明がされています。

要するに、人間を情報処理装置としてモデル化してしまった。

ここからModel Aのような、心理学なのか回路図なのか分からないほど精密なモデルへ進んでいきます。

ソ連には「なんでもシステム化する」時代背景があった

なぜこの発想が旧ソ連圏で育ったのか。

その背景として無視できないのが、サイバネティクスです。

1950年代のソ連では、当初サイバネティクスは「ブルジョワ的な疑似科学」と批判されました。しかし、その後急速に評価が変わり、1960年代には情報・制御・フィードバックによって複雑なシステムを説明する学問として広く普及しました。

MIT Pressによるソ連サイバネティクス史でも、サイバネティクスは単なるコンピューター技術ではなく、科学や社会そのものを改革するための「普遍的な問題解決言語」として受け止められたことが指摘されています。

経済まで情報システムとして管理しようとし、国家規模のコンピューターネットワークまで構想した国です。

そういう知的環境の中で、「人間も情報システムとして説明できるのでは?」という発想が出てきても、それほど不思議ではありません。

もちろん、「ソシオニクスはソ連のサイバネティクスから直接作られた」と断言できるわけではありません。

しかし、情報処理、構造、機能、相互作用、フィードバックといった概念を使って複雑な対象をモデル化する文化が、同時代の旧ソ連圏に強く存在していたことは確かです。

西側ではMBTI、旧ソ連圏ではソシオニクス

ここは非常に面白い分岐です。

どちらもユングの『心理学的タイプ』を重要な出発点にしています。

ところがアメリカではMBTIが発展しました。

「あなたはENTPです」
「あなたはINFJです」

というように、個人のタイプを測定して理解する方向へ進みます。

一方、旧ソ連圏ではソシオニクスが、「この人はどんな情報を処理するか」だけではなく、「このタイプとこのタイプを組み合わせたら何が起きるか」まで研究し始めます。

Duality、Conflict、Supervision、Mirror、Activation……。

人間関係そのものを16種類に分類する世界です。

リトアニア百科事典でも、ソシオニクスは「人格タイプとその相互適合性の理論」と説明され、ソ連崩壊後にはロシアやウクライナを中心に普及したことが記載されています。

つまり旧ソ連圏では、

「あなたは何者か?」だけでは足りなかった。

「あなたと私を接続すると何が起きるのか?」までモデル化したくなった。

ここから一気に沼が深くなります。

そしてサイコソフィアが登場する

しかし、ソシオニクスでも人間の全部を説明できるわけではありません。

そこでアファナシエフは別の4要素に注目しました。

Volition。
Emotion。
Logic。
Physics。

これらを強い・弱いという単純な尺度ではなく、「心理の中で何番目に置かれているか」という階層構造にします。

すると24タイプできます。

VLFE。
ELVF。
FVLE。

……日本人から見ると、だんだん暗号になってきます。

ところがロシア語圏では、これをさらに人間関係の予測にまで応用しました。

そもそも原典のタイトルからして『Syntax of Love=愛の構文』です。

サイコソフィア公式サイト自身も、この理論の主要用途として「人格類型」と「ペア関係のモデル化・予測」を掲げています。

つまり、

ソシオニクスで人間関係を分類したのに、まだ足りない。

別の軸でも24タイプ作ってしまった。

旧ソ連圏、恐るべしです。

そして最終的に「愛」まで24タイプにしたのがアマトリカ

さらに2015年。

今度はアマトリカが登場します。

アマトリカ公式の理論史では、ホンバックが複数の類型論を研究していた際、同じようなタイプ判定を持つ人でも恋愛行動が異なることに注目したことが成立のきっかけとして説明されています。

そこで、

Eros
Philia
Agape
Storge

という4種類の愛を使って、人間の関係性を24タイプに分類しました。

ここまで来ると、旧ソ連圏の類型論文化が何となく見えてきます。

ユングの心理機能を分類する。

情報代謝まで分類する。

人間関係まで分類する。

意志・感情・論理・身体を順位づける。

最後は愛そのものまで24タイプにする。

どこまで分類するんだ。

という話です。

旧ソ連圏は「性格タイプの魔境」である

もちろん、

「ロシア人は分類好きだから」

という国民性の話にするのは雑でしょう。

より重要なのは、この地域に

複雑な人間を、機能・情報・構造・相互作用によって体系化しようとする知的文化

が存在したことです。

そしてソ連崩壊後も、その文化は消えませんでした。

むしろロシア、ウクライナ、バルト圏などで、ソシオニクスの研究会、独自流派、サイコソフィア、さらに新しい類型論へと枝分かれしていきました。

実際、ソシオニクスはポストソ連諸国へ広まり、モスクワやキーウには専門機関まで作られています。

ただし、ここでも注意が必要です。

こうした理論が存在することと、現代の実証心理学において科学的妥当性が確立されていることは別問題です。

旧ソ連圏から生まれた類型論には、独自の理論体系、書籍、研究コミュニティが存在します。

だからといって、すべてを「科学的に証明された心理学」と扱う必要はありません。

むしろ、

「こんな巨大な人間分類文化が独自進化していた」

という点そのものが面白いのです。

アマトリカも、この巨大な系譜の一つ

日本ではまだほとんど知られていないアマトリカですが、突然インターネット上に現れた恋愛診断ではありません。

ユングの類型論があり、

旧ソ連圏でソシオニクスが生まれ、ロシアでサイコソフィアが作られ、その系譜の先にアマトリカがあります。

アマトリカ公式自身が、この流れを明示しています。

ちなみに、本サイトで紹介しているアマトリカの記事も、基本的にはこうしたロシア語圏の公式資料・原典を確認しながら再構成しています。

日本語圏ではまだほとんど資料がありません。

だからこそ、海外で「Amatoricaが大流行している」と誇張するつもりもありません。

ただ、「こんな理論が実際にロシアで作られ、公式サイトがあり、書籍があり、その前にはサイコソフィアやソシオニクスという巨大な類型論文化が存在していた」

という背景を知ると、アマトリカの24タイプもかなり違って見えるはずです。

MBTIの16タイプで満足できなかった人類は、ソシオニクスで人間関係まで分類しました。

それでも満足できず、サイコソフィアで24タイプ作りました。

そしてついには、

「人間の愛し方も24タイプにしてしまおう」

とアマトリカまで作ってしまった。

旧ソ連圏の性格類型論。

調べれば調べるほど、底が見えません。

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サイコソフィア編集キャラクター 最古・ソフィア
PSYCHOSOPHY EDITOR

最古・ソフィア ESFJ / EIE / 2w3

ロシア人の祖母を持つクォーター。職業はスタイリスト。 副業でカップル専門の恋愛アドバイザーをしていたが、 男女双方の話を聞き続けるうちに、 「恋なんてエゴとエゴのバトルロワイヤルでは?」と気づく。 そこで意志・感情・論理・身体の優先順位を整理するため、 サイコソフィアを提唱した――という設定。

「恋愛は思いやり?もちろん大切です。 でも、その前に“どのエゴが一番うるさいか”を確認しましょう。」

※最古・ソフィアは本サイトの架空の編集キャラクターです。 実際のサイコソフィア提唱者とは異なります。

このサイトのサイコソフィアコンテンツは、Afanasyevの理論をもとに、日本語環境での実用的な活用を目的として独自に構成・解説しています。

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