ロマンススタイル|Storge(ストルゲー)とは?

8年間ずっと一緒にいた相手の結婚式に呼ばれ、二次会の幹事を任され、そつなくこなして帰る。

これがStorgeです。

告白はしていません。する予定もありませんでした。自然に深まるのを待っていたら、相手が先に自然じゃない方法で決着をつけていた、というだけです。

Storgeは6色の中で、最も静かで、最も長持ちして、最も出遅れる色です。

6つのロマンススタイル一覧から飛んできた場合、概要はもう読んでいるはずです。ここから先は、Storgeだけを掘ります。

Storgeとは何か

Storgeはギリシャ語で、家族や身内に向ける自然な情愛を指す言葉です。

この6分類を作ったカナダの社会学者ジョン・アラン・リーは、愛のかたちを色相環にたとえました。Storgeはその三原色のひとつ。他の何かの混合ではない、独立した一色です。

リーの記述で面白いのは、Storgeの人が恋愛を特別な体験として扱わない点です。恋に落ちた自覚が薄く、情熱の高まりも小さい。そのぶん終わるときの落差も小さく、別れたあとに友人へ戻れる確率は6色中で最も高いとされています。

Storgeにとって愛は、事件ではなく状態です。

Storgeの恋愛傾向

Storgeの動きには、共通した型があります。

  • 恋愛の開始日を特定できない。記念日を聞かれて毎回困る
  • 告白より先に、生活のほうが混ざっている
  • 友人枠から恋愛枠への移行が、本人の中でも曖昧なまま完了する
  • 一目惚れの話を聞いても、素直には信じられない
  • 別れたあと、普通に友達へ戻れてしまい、周囲に驚かれる
  • 好きだと自覚するのが、関係者の中で最後になる

最後の項目が、この色の構造をよく表しています。

周囲は先に気づいています。「あの2人、そうなんでしょ」と言われ、本人だけが「いや、別にそういうのじゃない」と真顔で否定する。その半年後に付き合い始める。よくある話です。

Storgeは恋に落ちません。気温が変わるように、少しずつ状態が移行するだけです。

そしてこの遅さは、好意の薄さではありません。判定に時間がかかる設計になっているというだけの話です。ただし世の中は、その設計を待ってくれません。

こんな言葉が出ます

「好きになったタイミングが、正直わからない」

「ビビッとくる感じより、じわじわくる感じのほうが信じられる」

「友達としても好きな人と付き合いたい」

【男女別】Storgeはこう出る

同じ仕様でも、置かれる立場が違うので、出てくる被害が変わります。

女性のStorge

女性のStorgeが陥りやすいのは、関係が定義されないまま長期化する状態です。

一緒にいる時間は長い。連絡も途切れない。相手の家族構成も、薬のアレルギーも、金銭感覚も把握している。それなのに、何の関係なのかは一度も言葉になっていない。

そのまま2年、3年と経ちます。

Storgeの女性は、この曖昧さをそれほど苦にしません。時間が積み上がっている実感があるからです。ところが相手のほうは、その曖昧さを「いつでもそこにいる人」として処理していることがあります。

そしてある日、相手が別の誰かと明確な関係を作ります。

このとき女性のStorgeは、怒れません。約束をしていないからです。何も言わずに一緒にいただけの関係に、裏切られたと主張する根拠がない。だから自分の中だけで処理し、表面上は「良い友達」を続けます。

続けられてしまうところが、この色のいちばん残酷な性能です。

男性のStorge

男性のStorgeは、「いい人」で止まります。

長く一緒にいて、相談にも乗って、生活も把握している。それなのに恋愛の候補として認識されない。理由は単純で、動かないからです。

Storgeにとって、恋愛関係への移行は自然に起きるものです。だから待ちます。待っているうちに、情熱型の誰かが現れて、3週間で全部持っていきます。

男性のStorgeは、そのたびに「タイミングが悪かった」と結論します。

タイミングではありません。設計です。自然発生を待つ仕様の人間は、意図的に動く人間に構造上勝てません。

もうひとつ、この型には特有の遅延があります。今の距離は悪くない、踏み込めばこの居心地の良さが失われるかもしれない、という警戒です。

失うのが怖くて動かなかった結果、全部失う。この色では、かなりの頻度で起きます。

Storgeが沼るとき

Storgeは沼らない色に見えます。沼ります。しかも、抜けるのが6色中で最も困難です。

心理学的な裏側をサクッと

心理学に、単純接触効果と呼ばれる現象があります。

同じものに繰り返し触れているだけで、好意が高まっていくという現象です。曲でも、商品でも、人でも起きます。特別なことは何も必要ありません。回数だけが効きます。

Storgeは、この現象をそのままエンジンにしている色です。

だからStorgeが好きになるのは、素敵な人ではなく、よく会う人です。職場、学校、サークル、通勤経路。生活の動線が重なる場所にいる相手が、少しずつ特別になっていきます。

この仕組みには、停止装置が付いていません。接触が続くかぎり、好意は積み上がり続けます。相手がどういう人物かとは、ほとんど無関係に。

つまりStorgeは、相手を選んでいるようで、実際は配属先に選ばされていることがあります。認めたくない話ですが、単純接触効果とはそういう仕組みです。

「関係に名前がつかないまま3年」の危険性

Storgeが最も深く沼るのは、関係が定義されないまま接触だけが続く状況です。

名前がついていない関係には、終わらせる手続きも存在しません。付き合っていないのだから、別れることもできない。だから、ただ続きます。

そして時間が経つほど、積み上げたものが大きくなる。一緒にいた年数、共有した出来事、相手について知っていること。これらが全部、離れるコストに変換されていきます。

Storgeが動けなくなるのは、愛情が深いからではありません。積み上げが大きすぎて、解体作業に耐えられないからです。

Storgeが同じことを繰り返す理由

Storgeの恋愛歴を並べると、「長かったが曖昧だった関係」がずらりと並びます。

自分から関係を定義しないからです。定義するという行為が、Storgeにとって不自然な介入だからです。

さらに、この色は失敗から学びません。何も起きないまま終わった関係には、反省材料が残らないからです。喧嘩をしたわけでも、間違ったことを言ったわけでもない。ただ動かなかった。動かなかったことは、記憶の中で出来事として保存されません。

だから次も、同じように動きません。そして次も、二次会の幹事をやります。

Storgeが自分を見失うとき

Storgeが最も危険なのは、惰性と愛情の区別がつかなくなることです。

時間を根拠にしている色なので、「一緒にいる年数」と「一緒にいたい気持ち」が混ざります。

  • 相手に不満があるのに、続けている理由を説明できない
  • 「もう好きじゃないかもしれない」と思っても、生活が組み合わさっていて動けない
  • 相手が明らかに問題のある人物でも、時間があるので降りられない

3つ目が深刻です。Storgeは相手を評価する機能をあまり使いません。評価ではなく、蓄積で関係を維持しているからです。

だから周囲から見て明らかにおかしい関係でも、内側では成立し続けます。「もう10年一緒にいるし」という一言が、あらゆる問題を上書きしてしまう。

この状態のStorgeに、周囲は「別れたら?」と言います。的外れです。

Storgeにとって関係の終了とは、相手を失うことではなく、生活の構造そのものを解体することだからです。朝起きてから寝るまでの全部に、その関係が組み込まれている。引き剥がす作業は感情の問題ではなく、工事です。

工事を避けているうちに、また1年が経ちます。

Storgeの終わり方

Storgeの関係には、決まった終わり方が2つあります。

摩耗による終わり

何も起きないまま、薄くなって終わります。

喧嘩も裏切りもなく、会う回数が減り、話す内容が減り、いつのまにか他人に戻っている。事件がないまま始まった関係が、事件がないまま終わる。一貫はしています。

この終わり方をしたStorgeは、悲しみよりも空白を感じます。何を失ったのかが、うまく言葉にならない。

追い越しによる終わり

もうひとつは、相手が先に別の場所へ行く終わり方です。

Storgeが「そろそろかな」と考えている頃には、相手はすでに他の誰かと関係を始めています。しかも相手に悪気はありません。Storgeが何も言わなかったのだから、当然です。

この終わり方が最も応えます。何年も積み上げたものが、他人の3週間に完敗したという事実だけが残るからです。

Storgeと他の色の相性

すれ違いは性格の問題ではなく、愛の言語が違うことによって起きます。

相手の色起きること
Eros温度差が埋まらない。Erosは物足りず、Storgeは急かされて疲れる
Ludus距離感は合う。ただし積み上げに耐えてもらえない
Pragma最も噛み合う。時間と現実、両方を重視できる
Mania強度についていけない。Storgeが先に消耗する
Agape安定する。ただし共倒れになりやすい

Pragmaとの相性が良いのには理由があります。

そもそもPragmaは、LudusとStorgeの混合として定義された二次色です。Pragmaの中には、Storgeと同じ成分が最初から入っている。時間をかけて育てるという発想を共有しているので、速度が合うわけです。

もうひとつ、Storgeが関わる二次色があります。ErosとStorgeが混ざるとAgapeになる。情熱と、身内への自然な優しさ。この2つが結びつくと、見返りを求めない献身という形になります。

Storgeは静かな色に見えて、二次色の材料としてはかなり使い回されている色です。

Storgeの決めゼリフ

Storgeに開始日はありません。事件がなかったのだから、当然です。

そして開始日がない関係は、終了日も曖昧なまま、長く長く続きます。あるいは、始まらないまま終わります。

ここまで読んで心当たりがあるなら、Storgeは主スタイルの候補です。ただし6色は混ざって出るので、純粋な単一スタイルの人はほとんどいません。

そして、ロマンススタイルが説明できるのは「何をするか」までです。「なぜ、動けないのか」は、また別の層の話になります。

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