ロマンススタイル|Agape(アガペー)とは?

付き合っている相手の元恋人から来た面倒な連絡に、なぜか自分が対応している。相手に代わって、丁寧な文面で。

これがAgapeです。

頼まれていません。ただ、相手が困っている顔を見ていられなかった。そして処理し終わったあと、そのことを本人には言いません。言わないので、感謝もされません。

Agapeは6色の中で、最も献身的で、最も気づかれず、最も静かに枯れる色です。

6つのロマンススタイル一覧から飛んできた場合、概要はもう読んでいるはずです。

ここから先は、Agapeだけを掘ります。

Agapeとは何か

Agapeはギリシャ語で、見返りを求めない無償の愛を意味する言葉です。

この6分類を作ったカナダの社会学者ジョン・アラン・リーは、愛のかたちを色相環にたとえました。Agapeは三原色ではなく、二次色です。

具体的には、Eros(情熱)とStorge(家族的な情愛)の混合とされています。

情熱の強さと、身内に向けるような自然な優しさ。この2つが合わさると、「相手の幸福が自分の目的になる」というかたちになります。理屈としては非常に美しく、運用としては非常に危険な配合です。

なお、リーの整理では、Agapeは純粋な形で観測される例が最も少ない型とされています。多くの人が理想として語るのに、実際の行動としては貫徹されにくい。

Agapeは「なりたい愛」であって、「やり続けられる愛」ではないのかもしれません。

Agapeの恋愛傾向

Agapeの動きには、共通した型があります。

  • 相手が言う前に、必要なものを用意している
  • 自分の予定を、相手の都合で当たり前のように動かす
  • してあげたことを、本人に一切言わない
  • 「別にいいよ」で処理した案件が、年単位で溜まっている
  • 相手が困っているほど、力が湧いてくる
  • 限界が来ても、限界だと気づかない

5番目が、この色の構造を最もよく表しています。

Agapeは、満たされた相手には反応しません。困っている相手、うまくいっていない相手、誰かの助けを必要としている相手に対して、最大出力で点火します。

だからAgapeは、しばしば「そんな人やめなよ」と言われる相手を選びます。周囲から見て明らかに問題のある相手ほど、Agapeにとっては居場所があるからです。

そして、その居場所がなくなることを、Agapeは無意識に恐れています。

こんな言葉が出ます

「相手が笑っていれば、それでいいと思える」

「自分のことより、相手のことが先に気になる」

「尽くしすぎると言われるけど、そうしたいからしているだけ」

【男女別】Agapeはこう出る

同じ仕様でも、押し付けられる役割が違うので、消耗の仕方が変わります。

女性のAgape

女性のAgapeは、いつのまにか恋人ではなく管理者になっています。

生活の管理、健康の管理、人間関係の調整、金銭の後始末。気づくと、相手の人生の運営業務を丸ごと引き受けている。そして相手はそれに慣れていきます。

慣れた相手は、たいてい弱くなります。

これがAgapeの最も残酷な副作用です。尽くせば尽くすほど、相手が自分でやる能力を失っていく。能力を失った相手はAgapeから離れられなくなり、そしてAgapeもまた離れられなくなります。

依存しているのがどちらなのか、途中からわからなくなります。

さらに、女性のAgapeは「都合のいい人」として扱われがちです。それでも続けます。やめたら関係が終わると、どこかで正確に理解しているからです。

そして、この理解こそがAgapeの核心にあります。

与えているから、ここにいられる。何もしない自分に価値があるとは、まだ信じていない。だから手を止められない。無償の愛のように見えて、その根には非常に実務的な計算が置かれています。

献身と保険は、しばしば同じ形をしています。

男性のAgape

男性のAgapeは、「いい人」で止まります。

優しく、面倒見がよく、相手のために動く。それなのに恋愛の対象として認識されない。理由のひとつは、優しさが背景として処理されてしまうことです。空気に感謝する人はいません。

もうひとつ厄介なのが、都合よく使われやすいことです。

相談相手として呼ばれる。落ち込んだときだけ連絡が来る。困ったときの窓口として正常に機能している。そして相手が回復すると、連絡が止まる。

男性のAgapeは、この扱いに文句を言いません。言えば見返りを求めたことになると考えるからです。だから黙って次の呼び出しを待ちます。

待っている期間が、年単位になることもあります。

本人はそれを忍耐だと考えています。実際には、待っている状態そのものが居心地の良い場所になっていることも多い。要求しなければ、断られることもないからです。

傷つかない方法として献身を選んでいる場合、Agapeは驚くほど長く同じ場所に留まります。

Agapeが沼るとき

Agapeが沼るのは、感情ではありません。積み上げた量です。

心理学的な裏側をサクッと

心理学に、サンクコスト効果と呼ばれる現象があります。

すでに注ぎ込んでしまって取り返せないものが大きいほど、人はその選択をやめられなくなるという現象です。つまらない映画を最後まで見てしまうのも、これです。

Agapeは、この効果が最も強く働く色です。

なにしろ、投入量が桁違いです。時間も、労力も、金も、感情も、他の色とは比較にならない量が注ぎ込まれている。だから、撤退の判断が構造的にできません。

「ここまでやったのだから」

この一文が出た時点で、Agapeはすでに関係の外に出られなくなっています。

「私さえ我慢すれば」が出るとき

Agapeが限界を超えているサインは、はっきりしています。

「私さえ我慢すれば、この関係はうまくいく」

この考えが自然に浮かんだとき、それはもう献身ではなく、静かな消耗です。

ただしAgapeには、これを検知する装置が付いていません。相手が快適であることを判断基準にしているので、相手が問題なく過ごしているかぎり、システムは正常と表示し続けます。

自分の残量を測る目盛りが、そもそも実装されていない。愛のガス欠は、切れる直前まで自覚できません。

Agapeが同じことを繰り返す理由

Agapeの恋愛歴を並べると、手のかかる相手ばかりが並びます。

途中で、自立した相手と関わったこともあるはずです。ところが続いていません。

Agapeの居場所がなかったからです。何も必要とされない関係は、Agapeにとって存在意義のない関係です。だから、いつのまにか距離が空きます。

つまりAgapeが選んでいるのは、愛したい相手ではなく、必要としてくれる相手です。この2つは似ていますが、まったく別物です。

そしてこの選び方は、決意では変わりません。手のかかる相手を避けようと決めても、判定が下りるのは「助けが必要そうな人」の前だけだからです。自立した相手の前では、そもそも何も起きない。何も起きないので、候補にすら上がりません。

選ばなかったのではなく、検出されなかった。それだけの話です。

Agapeが自分を見失うとき

Agapeが最も危険なのは、自分の欲求が消えることです。

  • 何が食べたいか聞かれて、答えが出てこない
  • 相手の予定が入っていない日に、何をすればいいかわからない
  • 自分の幸福を、相手の状態で測るようになる

3つ目まで来ると、Agapeは単体では機能しなくなります。相手が笑っていれば良い日、相手が不機嫌なら悪い日。生活の評価基準が、完全に外部へ移管されています。

そしてこの状態を、Agapeは愛だと解釈します。

解釈するので、問題として認識されません。周囲が「もっと自分を大事にしなよ」と言っても、その言葉が何を指しているのか、本人にはわかりません。自分を大事にするとは具体的にどういう作業なのか、手順書がないのです。

Agapeの終わり方

Agapeの関係には、決まった終わり方が2つあります。

枯渇による終わり

ある日、全部やめます。

前触れはありません。何年も文句を言わずに引き受けてきた人が、突然すべての手を止める。相手は何が起きたのか理解できません。何も言われていなかったのだから、当然です。

そしてこの段階のAgapeは、話し合いに応じません。話し合う体力が、もう残っていないからです。

決算報告による終わり

もうひとつは、溜めていた帳簿が一度に出る終わり方です。

見返りを求めていないつもりで、記録だけは異様に正確に残っています。何をしてあげたか、何を我慢したか、いつ言えなかったか。それが、ある日まとめて放出されます。

相手からすると「急にどうした」という話ですが、急ではありません。7年前から積まれています。

この終わり方をしたAgapeは、たいてい後悔します。あんな言い方をするつもりはなかった、と。ただし、言わずに済ませてきた年数を考えれば、利息がついて当然です。

Agapeと他の色の相性

すれ違いは性格の問題ではなく、愛の言語が違うことによって起きます。

相手の色起きること
Eros与えるほど熱が下がる。尽くすと冷められる
Ludus重さとして受け取られ、逃げられる
Storge安定する。ただし共倒れになりやすい
Pragma与えられすぎて、相手の計算が狂う
Mania一見理想的。実際はAgapeが枯れる

最も注意すべきは、Maniaとの組み合わせです。

Maniaは確信を欲しがり、Agapeは与えることができる。表面上は完璧に噛み合って見えます。

ところがManiaの不安には底がありません。どれだけ与えても、確信は一時的にしか成立せず、翌週にはまた不足する。Agapeは供給を増やし続け、やがて枯れます。

Erosとの組み合わせも報われません。Erosは確保できた相手に火力を維持できない色なので、尽くされるほど熱が下がる。相手からすれば理不尽な話ですが、これは仕様です。

なお、Agapeを構成しているのはErosとStorgeです。情熱と、身内への自然な優しさ。この2つを内側に持っているぶん、Agapeは相手を家族のように扱おうとします。恋人ではなく身内として扱ってしまうところに、この色のすれ違いの根があります。

Agapeの決めゼリフ

Agapeの請求書は、未発行のまま溜まっています。

そして未発行である以上、相手は支払いません。支払うべき額があることすら、知らないからです。

ここまで読んで心当たりがあるなら、Agapeは主スタイルの候補です。ただし6色は混ざって出るので、純粋な単一スタイルの人はほとんどいません。

そして、ロマンススタイルが説明できるのは「何をするか」までです。「なぜ、受け取れないのか」は、また別の層の話になります。

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