MBTI診断とラベリング効果の関係

ラベリング効果

無意識に特定のタイプを演じる人々

先日のNi洗脳:INTJ/INFJになりたがる人達の補足記事です。

X(旧Twitter)のMBTI診断界隈で頻繁に観察される「タイプ憧れ症候群」の根底には、心理学で知られる「ラベリング効果」が潜んでいます。

本記事では、このラベリング効果がどのようにMBTI診断の自己認識に影響を与え、時に自己洗脳につながる可能性があるかを、X:旧Twitterでの出来事を交えて解説します。

ラベリング効果とMBTI診断

ラベリング効果とは、ある人やグループにラベル(分類)を付けることで、そのラベルに合致した行動を取るようになる心理現象です。

  • 社会学者ハワード・ベッカーが提唱した理論で、他者から貼られる「レッテル」が、その人の自己認識や行動に影響を与える現象です。ベッカーによれば、特定の行動が「逸脱」とされるのは、その行動自体の性質ではなく、社会がどのように反応するかによって決まります。
  • ラベリング効果の代表的な実験には、デイヴィッド・ローゼンハンの精神病院実験があり、健康な人々が「統合失調症」としてラベリングされると、正常な行動さえ病的に解釈されました。

このように、ラベリング効果は教育や職場、司法制度など幅広い分野で影響を持ち、個人の自己成就や他者の期待に関わる重要な概念です。

ドラえもん/のび太はなぜ怠け者か?

のび太くんは、先生やお友達から「野比は怠け者だ」と思われています。すると、のび太君は自分を「怠け者」だと認識し始めて、勉強や宿題をする気が減り、「どうせ自分は怠け者だから」と考えるようになります。

結果、友達や家族も彼を「怠け者」としてのび太くんをみるようになり、本人の中にも「怠け者」としての行動がさらに強化されます。時間の経過を経て、のび太君は本当に、そのラベルに合致した人物になっていきます。

こうして、のび太くんは周囲のラベルにこたえるかのように怠け者になります。ラベリング効果の怖いところは、他者や周囲のイメージの積み重ねが、無意識に本人に影響を与えているという事です。

発達障害とラベリング効果

発達障害という言葉の普及により「発達障害自認」が増加しているという現象が見られます。

発達障害という概念が社会的に広く認知されることで、自分の行動や特性がその基準に少しでも当てはまると感じた人が、自らを「発達障害」と認識するようになります。これは、社会からの評価や診断を受ける前であっても、個人が自分自身にラベリングを行うことで、発達障害という枠組みに自分をはめ込む傾向が強まることを意味します。

このような自己認識は、診断を通じて明確に発達障害と確認されるケースもありますが、必ずしもそうでない場合でも「自分は発達障害かもしれない」という意識が芽生え、日常生活においてそのレッテルに沿った行動や思考パターンが固定化される可能性があります。

これが発達障害自認の増加に繋がる一因となります。

このように、ラベリング効果は人の行動や自己認識を大きく変える力を持っており、時に良くも悪くも影響を及ぼす可能性があります。

MBTI診断×ラベリング効果

特にX(旧Twitter)上では、このラベリング効果が発揮しやすい傾向にあります。

自己成就予言

16personalities診断の結果を受け入れると、多くの人はその性格タイプの特徴を意図的に表現しようとすることがあります。

この心理には、承認欲求自己成就予言が関係しています。

例えば、

  • 日常的な出来事を投稿していた人が、急に抽象的で哲学的な投稿を増やし始める
  • 16personalitiesの診断結果で「INTJ」と診断され、プロフィールにそのタイプを書き込む
  • フォロワーから「さすがINTJらしい発言だね」といった反応を密かに期待している

このような反応は、他者からの関心を得ることで、自己肯定感と承認欲求を満たすための行動が裏の目的にあります。

さらに、これは自己成就予言の一例とも言えます。

自己成就予言とは、自分が信じる特定のイメージや期待に基づいて行動し、その結果としてその期待が現実になる現象です。「INTJらしい」と言われたいという期待を抱くことで、実際に「INTJらしい」行動を意図的に取るようになる。

しかし、このようにして作り上げられる「INTJ像」は、必ずしもその人の本来の自己を表しているわけではありません。外部からの承認を得るために演じている部分も多く、実際の自己とズレが生じることがあります。

この傾向がエスカレートすることで、自己との乖離感に悩むことも起こり得ます。

STEP
1

確証バイアスの強化

自分のタイプに関する情報を積極的に探し、それに合致する特徴を過度に強調する行動は、確証バイアスを強化する典型的な例です。確証バイアスとは、自分が信じていることや期待していることに合致する情報だけを集め、それに反する情報を無視する傾向のことです。

例えば、「INFJは人の心がわかる」というツイートを見つけると、即座にリツイートし、「先日、友人の悩みを言われる前に察知した。これはINFJの能力!」と、自分の経験を投稿します。こうした投稿は、自分のタイプに対する信念をさらに強化し、同じような意見を持つフォロワーからの共感も得られやすくなります。

しかし、この過程で、自分に当てはまらない側面や、異なる可能性を見逃すことになります。

加えて、意図的にフォロワーと距離を置き、自分独りに向けた内向的な投稿を行うケースもあります。これは、自分が「INFJである」という認識を確証し、外部からのフィードバックや異なる視点を排除するための行動とも言えます。

結果として、こうした確証バイアスが強化されることで、他のタイプの特性や、自分自身の多様な側面を見落とす可能性が高まり、視野が狭くなってしまうのです

STEP
2

ステレオタイプの内在化

タイプに関する一般的な認識(ステレオタイプ)を無意識に自分の性格として内在化してしまう現象です。

ステレオタイプを内在化することで、日常生活や職業選択に支障をきたすことがあります。例えば、自分が「INTJだから感情表現が苦手」や「論理的思考が得意」といった認識に強く囚われてしまい、他の能力を発揮する機会を制限してしまうことが挙げられます。

具体的には、

  • 「自分はINTJだから営業のような感情を使う仕事は向いていない」と決めつけ、営業や顧客対応の仕事を避ける
  • 社交的な場面でのスキルを伸ばすことを諦める。コンサルタントや学者などの知的業務だけをやりたいと願う

このような選択肢の制限により、職場でのキャリアの幅が狭まり、結果的に成長や成功のチャンスを逃すことにつながります。また、自己の多様な能力を無視することで、職場での柔軟性が欠け、チームやプロジェクトへの貢献が限定されることもあります。

STEP
3

アイデンティティの再構築

MBTI診断結果を基に、自己イメージを再構築し、それに合わせて行動や思考パターンを変化させる現象があります。

例えば、自分がINFJだと自己診断した人が、「INFJらしく、常に高い視点で物事を見なければならない」と焦燥感に駆られます。その結果、自分の本来の興味や価値観とは異なる「理想のINFJ像」を追求し始めます。具体的には、毎日のように「この世界は…」「MBTI界隈は…」「本当の姿は…」といった哲学的な投稿を繰り返し、「自分は他の人とは違う特別な存在なんだ」と周囲にアピールします。

しかし、本人は「これこそが自分らしさだ」と感じていても、外部から見ると、ただ「INFJペルソナ」を演じているにすぎません。自分のタイプに囚われすぎることで、真の自分を見失い、他者から見てもその行動が自然でなくなる可能性が高まります。

STEP
4

社会的期待への同調

自分のタイプに対する周囲の期待に応えようとして、タイプの特徴をより強く表現するようになる現象。

  • INTJは戦略の天才
  • INTJは陰の実力者

という期待に応えるべく、日常の些細な出来事に対しても何らかの意味深いツイートを投稿して、過度に何かを持っているぜ!的な姿勢を示すようになります。この行動は、社会的な期待に応えようする表れです。

これらの例は、X(旧Twitter)上で INTJ/INFJ のラベルに基づいたペルソナを作り上げ、それを強化していく過程を示しています。

STEP
5

ペルソナの完成

ユーザーは自己のアイデンティティをこれらのステレオタイプに合わせて再構築し、「理想的な」INTJ/INFJ像を演じるようになります。

STEP
6

ビジネス界隈では、このペルソナ(キャラクター)を意図的に作り出します。対して、性格界隈だと、本人も気づかないうちに、自分が憧れるタイプを作り出し、そのように振舞うのです。

特筆すべきは、この現象が本来の自分を理解することを妨げて、特定のタイプのイメージを強化するだけの「なりきり」になってしまう点です。

日本人はラベリングを好む!

日本人がX(旧Twitter)内のラベリング効果にハマりやすい理由については、コミュニティ(界隈)に属することを好む点です。

日本社会では「空気を読む」や「和を乱さない」という集団意識が強く、所属するグループの規範に従う傾向があります。MBTIの各タイプは、特定のコミュニティへの「所属集団」となり、そのコミュニティに所属するために、自分を適応させます。

  1. 集団意識
  2. アイデンティティの探求: 現代の日本社会では、特に若者の間でアイデンティティの探求が盛んです。MBTIは自己理解のツールとして魅力的に映り、その結果に強く依存しがちです。その証拠に、16personalitiesのユーザーの多くは日本人であることがわかります。
  3. 曖昧さの回避: 日本文化には曖昧さを好む傾向があります。16personalitiesの分類は、強力なバーナム効果が発生するため、日本人から受け入れられやすいです。一時期、動物占いが流行ったのも同じ現象でしょう。
  4. SNSでの自己表現欲求: 日本のSNS利用率は高く、特にXは自己表現の場として人気です。MBTIタイプは自己を表現する便利なツールとなり、それに沿った投稿を行う動機が強まります。
  5. キャラ設定文化: 日本のサブカルチャーには「キャラ設定」を重視する傾向があります。MBTIタイプは一種の「キャラ設定」として捉えられ、それを演じることに抵抗が少ないです。これは、MBTIのイラストを描く層がX:Twitter内にいる事からもうかがえます。
  6. 同調圧力と完璧主義: 日本社会には強い同調圧力があります。X上で特定のMBTIタイプが人気を集めると、それに同調しようとする圧力が生まれやすいです。完璧を求める傾向があります。自分のMBTIタイプの「理想的な姿」を追求し、それに完全に合致しようとする動機が強くなります。

これらの要因が複合的に作用し、日本文化-X:旧:Twitter-MBTI診断は、強力なラベリング効果を誘発させて、本来の自己像を破壊してまで、MBTIに基づいたペルソナを演じることに夢中になる人を増やしていくのです。

特に、事前に十分な予備知識や性格類型の体系的な理解をせずに、無料のオンライン診断テストで安易に自身のタイプを判定すると、半ば自己洗脳的に自分のタイプを決め付けるようになります。

周りに自認タイプを強く意識し、それを強化しているように見える人がいたら、注意深く観察してみましょう。彼らの行動が本来の性格とどの程度一致しているか、また時間とともにその行動がどのように変化していくかを見守ることで、ラベリング効果の影響を実感できるかもしれません。

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